国公立大学100校到達
地方自治体が設置する県立や市立の公立大学の数が、今年度100校に到達した。少子化が進む中にも関わらず増え続けている背景には、若者を引き留め、地域の衰退に歯止めをかけたい思惑がある。その一方、公費投入による大学運営が健全な競争をゆがめているという批判の声があるのが事実だ。
公立大学は医療や介護など、地域が求める専門人材を担ってきた。1948年、最初に神戸に開学した神戸商科大学(現兵庫県立大学)は、戦時中の医師不足を補う目的であった。現在は、高齢化社会になった影響を受け、看護を目的とした開学が目立つ。
そのよう中、100校目の開学となったのは、北海道第二の都市、旭川市立大学である。市立旭川大学の申請を受け市が運営を引き継いで、今年4月に開学した。旭川市には市立旭川大学のみであったため、多くの高校生の卒業後は進学先として札幌の大学や首都圏の大学を選ぶ傾向が強い。このようなことから、地元旭川市にとって大学存続は大きな課題となっていた。
さて、私立大学から市立大学になると学費は一帯いくらに減額されるのだろうか。当然高校生やその保護者は大きな興味関心の的となる。今までの私立大学では、当然学部によっても違うが約80万円から120万円であったが、市立大学になると約54万円下がったという。これによって入学試験の競争倍率は1.7倍に急増した。それは今年8月に行われたオープンキャンパスの見学者数からも人気の高さが伺えると言う。
公立大学の多くは、上述したように地元若者の流出を防ぐ“ダム”のような役割を担っており、今後も増える傾向とみている。来年には、山形県が「東北農林専門大学」を開学すると発表している。また三重県では県立大の新設を検討していると言う。
しかし、「若者の流出を食い止める」という目的で公立大学を新設、開学することに対して、疑問を持つのは私だけであろうか。そこでこれら大学を卒業した学生を思ってもらいたい。卒業後の進路就職が問題である。つまり地元に魅力ある就職先、仕事がない限り、就職先として首都圏をはじめ関西圏や中京圏に流失してしまう。公立大学を開学しても、流出する時期を単に遅らせるだけで、何ら根本的な解決にはなっていないと強く感じる。また今後公立大学が増えることによって市立大学の存続といった新たな問題も湧出することも否めない。
こういったことをもう一度根本に帰って、もう一度考えてもらいたいところである。