公立高校離れ、高校無償化
公平な教育機会を提供するのが狙いとして、来年4月から私立高校に通う生徒の授業料が実質無償化される。これによって家庭の経済的負担を軽減する。しかし私立高校の人気上昇が公立高校の地盤沈下を招き、多様な教育の場が失われる可能性があると指摘されている事実がある。
高校授業料は今年度、公立・私立の別や家庭の経済状況に関わらず高校生一人118,000円が就学支援金として支給されている。私立高生徒のいる年収590万円未満世帯の場合は、支給上限が396,000円となっている。
そのような中、来年度からは世帯の所得制限を撤廃し、支給上限が457,000円(私立高校全国授業料額)へ一律引き上げられ、実質無償化される。さらに教科書代や就学旅行費などにあてられる奨学給付金も、支給対象が生活保護世帯などから中所得者層まで拡充される。
私立高校進学は、受験者はもとよりの保護者もこの実質無償化を歓迎している。ますます私立高校への進学選択肢は、大きな存在となっていくことは間違いない。なぜ私立高校の人気が高いのか。まずは施設・設備の充実が高いことが上げられる。例えばキリスト教系の学校では1億円近いパイプオルガンが設置されていたり、講堂にはステンドガラスがはめ込まれた窓が並んでいたりしている。また多くの私立高校においては、各部活動に対応できるようサッカーや野球、ラグビーといった競技別に専用のグランドを目にすることができる。テニスのコートの面数も申し分ない数が確保されている。まだまだたくさんある。格技場には、体力増強のマシーンを備えているところも特徴のひとつであろう。また大学進学におけるサポートも忘れてはならない要因である。習熟度別の授業が展開され、ネイティブの先生の数も多い。また交換留学生の人数も多く、生の英語を教師からだけではなく同じ位置となる友達から耳にすること、話す機会も増える。
無償化の実現は、親の経済的負担の軽減、また子供が学びたい学校に行けるよう環境を整備するところにある。その一方で今回の支援金拡充は公立高校の吸収合併や統合、しいては廃校がさらに進むと思われる。これによって身近な公立高校の閉校によって通学が困難な生徒が増えていかないかということが懸念される。
制度開始後には検証が必要となり、バランスの取れた仕組みに改善していく必要は否めないと思われる。