東京書籍アドバイザー問題
「○○先生より連絡があり、国語と英語が開拓」。これは某自治体の教育課題アドバイザーから東京書籍の社員に送られたメールの一部ということが調査委員会で明らかになった。これはどのような意味なのか。以前他社の検定教科書を採択していたが、国語と英語については、東京書籍の検定教科書に変更するという意味と受け止められている。東京書籍は2015年、検定中の教科書を教員らに見せ、現金などを渡す「教科書謝礼問題」が発覚。約2000人の教員が数万円から十数万円の謝礼を受け取っていた。教科書を編集する上で実際に教科書を使う現場の先生のいけんを取り入れるのは確かに重要である。ただこれが教員と教科書会社との癒着は問題である。これを受けて、翌年教科書協会は、意見を聞いた教員に謝礼を支払うことを全面的に禁じた。そのような中、今回この“癒着”を疑わなければならないことが再び発覚したのである。
通常、教科書の採択は、校長や教員などで構成される調査員が教科書を比較するための資料を作成し、それを保護者を含む選定委員会に諮る。ここで各教科書を精査し報告をまとめ、教育長や教育委員で構成される市町村教育委員会が教科書を採択するという流れである。今回は採択するこの最終段階において問題が発覚したのだが、そもそもなぜこのようなことが起こってしまうのか。これは教科書の採択が4年に1度行われることが起因の1つとされる。つまり一度採択されれば、4年間の教科書売り上げによって教科書会社は収入の安定が約束されるのである。
私も学校教科書を学習指導の一つとして利用しているが、過去に「なぜ?前までの教科書の方が使いやすかったのに」と思ったことは何回かある。文章そのもの、というところもあるが、本文をよりよく説明、生徒に理解納得するための図やグラフ、写真といった史資料が削られてしまっていたり、簡素化されてしまったり、という点があげられる。また目次構成も変更後は大きく気になるところである。教科書を使って学習指導する人全員が、「100%これはいい」ということはないとは思うが、あまりにも改訂に賛同が得られないことがあったのも事実である。
文部科学省は、今回のこの事案に対して調査委員会の「法的な問題はなかった。ガバナンスの観点から、不適切な事象があった」という報告を受けて、『教科書選定に疑念を持たれかねない』と口頭で行政指導するにとどめた。