
高校生が飲酒で退学勧告は違法の判決
2022年の夏、事件は起こった。この年東京都の私立高校に入学した女子生徒(当時15歳)は友人の自宅で同年夏に飲酒し、その様子を撮影した動画をSNSに投稿した。しかし、この飲酒を理由に退学を強いられたのは“違法”だとして、女子生徒は学校を運営する学校法人と当時の校長に慰謝料240万円の賠償を求める訴訟を起こした。
学校側は、集団での飲酒は常習化を招き、SNSに投稿する行為がさらに他の生徒への影響が広まる恐れが大きいと考えられ、決して無視できない、このような処分は妥当だとしていた。
しかし判決は、東京地裁で今月に減額はされたものの66万円の支払いを学校側に命じた。判決理由として、『飲酒は避難に値し、SNS投稿が学校秩序に及ぼす影響も低いとは言えない。しかし直ちに学外に排除するほど悪質とは言えない』というものである。さらに『停学など他の処分を考えなかったのは、学校側の裁量権を乱用するものに値する』とした。
このような判決を前にして、多くの保護者は色々と考えるところがあるかと思う。飲酒や喫煙は、(令和4年)4月1日の民法改正施行(成年年齢の18歳への引き下げ)により題名を「未成年者喫煙禁止法」から改正され、対象も第3条を除き全て「満二十年ニ至ラザル者」から「二十歳未満ノ者」に改正されたことも記憶に新しい。年齢のとなえ方に関する法律により満年齢が適用され、実質的範囲は従来のままとなっているのだ。
このような飲酒に限らず喫煙の未成年者違法事件は、昨年の体操の宮田選手の事案を思い起こす方も少なくはないだろう。バリオリンピック代表、しかも主将であった宮田選手(当時19歳)は、開催一週間前という直前という時期にもかかわらず、飲酒・喫煙が確認されたため出場を辞退したというものがあった。
一部の保護者からは、「高校は義務教育ではない。まして私立高校であるならば、品位を守ることができず汚す行為をするのであるならば、勧告ではなく処分でも良いくらいだ。場合によっては“学校名を汚す行為”というものに対して、今後の学校の評判、風評というものを考えれば、学校側は生徒保護者に対して損害賠償を求めても良いのでは」、という厳しい声も聞く。またこの判例が今後「飲酒をしても退学にはならないという生徒間において、これらに対しての遵守感が薄れるのではないかとも危惧する。法律を守れないと言うことは、学校の規則「校則」も守れない、ましてSNSに投稿する、という行為がどんな影響を及ぼすのか、ということを予測できないのでは、この先在学してもまた何らかの問題を起こすという不安はぬぐえない。
女子生徒が私立高校ではなく公立高校(都立高校)に在学していれは、また見方が違う方も多くいたのではないかと思われるが、いずれにせよこの事案はまだまだ注目を集めそうである。