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CBT化が進むテスト

Computer Based Testing、いわゆる“CBT”化が加速している。これはパソコンやデジタル端末で問題を出題し、キーボードやタッチパネルで解答するテスト方式のことである。これは教員の負担軽減につなげようとするのが目的の根幹となる。愛媛県松山市の公立中学校では、すでに今年度の6月の期末テストで導入をしていたり、埼玉県では2024年度から学力状況調査のテストでの実施を目指していたりしている。これらを受けて、文部科学省でも2024年度以降、全国学力状況調査で段階的にCBT化を目指すとしている。

しかし、このCBT化においてはすべてが効率化および機能的になるのか、という疑問の声も上がっている。千葉大学の藤川教授は、入学試験も今後はCBTになる可能性が高く、子どもたちに慣れさせるメリットはあるとしつつも、数式や図を手書きする数学などではCBTに適さない問題もある。となると、出題に偏りが生じる可能性があると危惧されることであろう。また東京大学の酒井教授の研究チームでは、紙媒体にメモを書き込む方が電子機器より短期間で記憶でき、内容を思い出しやすいという研究結果をまとめている。

さて横浜市ではどうかというと、現在デジタル採点が進み始めている。模範解答と定期試験の受験者解答をスキャナーで読み込み、パソコンの画面上で10人から20人の答案用紙を一度に表示する。画面上の模範解答と照らし合わせながら不正解を抽出し採点を行う。横浜市立高田中学校の堤拓教諭によると、今まで8時間かかっていた一連の採点が、3時間程度で終わったという。そしてクラス毎の全体の理解度の分析が即座にできたり、正答率の低い問題を重点的に指導できたりできるようになったという。

ただし当然費用もかかってはくる。デジタル採点システムの開発メーカーによると、年間費用として公立学校で年間10万円、私立学校で50万円前後が相場になるという。このようなことから、鳥取県では、公立高校24校のうち本格的にデジタル採点システムを導入できたのは、わずかに普通科の大規模校の5校に過ぎなかったという。

採点は教員にとって手を抜くことができない重要な業務で、定期試験後の成績処理の事を考えればデジタル採点を導入するべきだと思うが、一方、問題毎に機械が採点してしまうと教師が一人ひとりの答案用紙に向き合う機会が減ってしまうという懸念もあるのが事実であろう。

CBTの導入により教員の負担軽減、効率化はいいとしても、答案用紙から見える生徒個々の課題やその傾向、生徒一人ひとりの個性を掌握し、成長につなげる事を忘れてはならないと思われる。

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