切り替え、決断、そして新たな一歩
鎌倉市内の中高一貫の「清泉女学院」に通う、高校2年生の中沢さんは、先日8月に東京都港区で行われた、全国高校将棋選手権大会で見事優勝を成し遂げた。全国から並み居る強豪79人の頂点にたったのであるが、前回の全国高校将棋女子選抜0大会の優勝に続いての快挙である。
中沢さんが将棋に興味を持ち打ち始めたのは、小学校3年生の頃らしい。父や兄が将棋を指しているのを間近に見て、だんだんルールを覚えていき、その後自宅近くの将棋サロンに週3回ほど通ったとのこと。そして小学校6年生の時にはアマチュア初段の腕前になった。中学生になるとプロ棋士の方に指導を受けたり、手ほどきを受けたりして、その腕前はみるみるうちに上達していったという。
私の時代では、将棋と言えば羽生善治棋士が次々に記録を打ち立てていき、これらの印象が強いが、現在は何と言っても藤井聡大棋士が先ず頭に浮かぶであろう。このように考えると女流棋士にはなるが、次世代としてこの中沢さんの台頭に期待を寄せるところがある。しかし特筆すべきは、棋士の道へは進まないと言うことである。思わず「えっ!」と思ってしまうであろう。ではどんな道へと進むのか。興味が非常に引かれるところである。中沢さん曰く、「医の道へ進みたい」と言う。実は以前から将棋は高校2年生の夏までと決めている。これからは大学医学部合格を目指して勉学に励むと言うのだ。多くの親であるならば「もったいない」とつい思ってしまいがちだが、中沢さんの強い意志は変わらないらしい。では、何故このような決断ができるのか。それは中沢さん自身に起因があることが分かった。中沢さんは自身の心臓に持病があり、定期検査を受けるたびに親身になってくれる医師へのあこがれがそれだと言う。このようなことから将来は小児科医になり、多くの子どもたちの力になりたいと熱望している。
中沢さんに学びたいこととして、一日多いときには7時間から8時間に及ぶ対戦の集中力、次に将棋は高校2年生の夏までと区切りを決めることができる決断力、そして最後に新たな目標へ邁進していく推進力。どれ一つとってもなかなか難しいことであることは間違いないことで、充分中沢さんから学ぶ意味は大きいと考えられる。
現在、色々な目標を持って勉強以外にも力を入れている生徒・児童は多いと思うが、初志貫徹を掲げるなどして、実現へ大きく前進して欲しい。