デジタル教材の懸念が現実化
2割。この数値は何なのか。これは公立小学校・中学校・高等学校において、通信環境が充分整っているとされる学校の割合である。
だから、やはりというか案の定、「先生、教科書が開けません」とか「画面に円がグルグルまわりっぱなしです」、また「音が出ません」、さらに「画面が動きません」という声が教室のあちらこちらから上がっている現状が、今年文部科学省の2023年度調査で明らかになった。
個人的には「やはり…」という感じで、別段予想範囲内の事なので驚きはしないが、こんな現状や現況にはならないとして進めてきた官公庁に驚く。九州のとある学校では、紙の教科書の方がテンポよく学習が進められるため、デジタルは一切使っていない、という学校があるほどだ。
文部科学省が小中教員を対象とした2023年に行った調査では、授業中デジタル教材を使う教員は13%に留まり、使用頻度は4回の授業に対して1回未満であると答えた数値は全体の約半分、49%を占めた。このような結果になった原因、声は「ログインに手間と時間がかかる」、「ページめくりが遅くて使いづらい」また「パスワードの設定に課題がある」というものであった。また端末故障の保険を扱う代理店からは、机からの落下による故障が原因で動作に支障を来す事例が非常に多いと言う。このため学級、学校にある予備の端末では補充できず不都合が生じていると言う。またこのような使用頻度になった原因に、児童生徒が授業中、関係のないユーチューブを見たりゲームなどをしたりといった関係ない物を閲覧し、授業に対しての集中力を削ぐツールにもなっていることがあげられる。大阪市のある学校の先生は、多くの教員がこれに頷いていると声を寄せる。このようなことから埼玉県のある小学校の校長は、この先デジタル教科書だけになることは、まずないと断言している。
政府はGIGAスクール構想において、子供が自分のペースで学習できるとして推し進めてきたが、これはかなり難しい着地点に向かいそうである。
コンピュータによる学びは、効率を阻み、教員とのコミュニケーションを阻害し、また教師の必要性を否定する物になりかねない懸念はやはり否めない。今一度、端末の利用を考えなければならない時にさしかかったように強く思える。