
神奈川県公立高校共通選抜試験実施
県内公立高校の筆記試験が14日、146校で行われた。全日制142校の募集定員は38,478人で、これに対して44,837人が受験した。その倍率は1.17倍となり、昨年並みの倍率であった。最も倍率が高かったのは横浜翠嵐高校の2.0倍で、県内唯一の2倍超えとなった。一方35の学校で定員割れの倍率となり、1,356人の欠員が生じた。
今年の出題内容は、前年とほぼ変わらず、要点を的確に読み取り、短時間で効率よく解く力が求められたと言える。今年も単に知識の定着だけでなく、それを活かした考察力や応用力が各教科で求められた。これに対しては、模擬試験などを利用し自分の力を随時確認した学習ができたか否かで合否の結果が左右されるのではないかと言える。
各教科のポイントは、以下のように分析した。
- 英 語 -
大問構成は昨年と同様であった。問1のリスニングは若干難度が上がったものの、大差はなかったと言える。問2から問4の単語力や文法力を見る問題では、正確さを求められた。これにより話し相手の意図を正しく捉えられたかがポイントとなった。特に問4では、対話が成立できるように並べ替える問題で、英語力が問われた設問と言える。問5では、場面をよく理解するだけでなく、条件に合わせて6単語以上で答えなければならなかったことがハードルとなったようだ。問6から問8は例年通り、資料を読み解く問題である。特に問6では本文内容を問う問題でも、選択肢をよく読まないと誤答を選んでしまうというミスを誘発させやすい問題であった。そして問7では昨年同様、計算が求められた。条件にあった金額を英文から正確に読み取らないと正答に至らなかったり、登場人物の予定を正確に立てたりできないといった問題も見られた。
いずれにせよ、単語や熟語力を充分に身に付けた上で、過去問題を中心に類題をどれだけ多く解けたか、今までの傾向からこのようなことがポイントとなったと言える。
- 数 学 -
英語同様、大問構成は昨年と変わらなかった。問1は計算問題、問2は回転体の問題が出題された。この回転体の問題は多少難しいと感じたが、実践的な問題演習に取り組んでいた生徒は、「さほど…」という感じてあったと思われる。問3の(イ)では3年連続で箱ひげ図であった。3人の会話から順位を導く問題であったが、過去問題に取り組んでいた生徒は6択から簡単に2択まで容易に答えを絞ることができ、効率の良い解答ができたと考えられる。問4では、関数の問題が変わらず出題された。が、特筆すべきは直線と放物線が画かれたのものではなく、反比例の双曲線が2本画かれた問題であった。問5は確率、問6は空間図形の問題であった。いずれも例年より何度は低かったと推測できるが、三角柱の断面図を正確に書き、直角三角形の辺の比に注目できればと言う条件を付け加えなければならない。これについても過去問題にしっかり取り組んでいれば、頭を悩ます問題ではなかったと言える。
やはり過去問題に取り組むことが、大切であると言うことを感じたものであった。
- 国 語 -
出題傾向、構成に大きな変化はなかった。問1は漢字の読み・書きの問題と俳句であった。漢字は「集団」や「誤算」といった易しいもので、読み問題においても「竹刀」など小学校レベルと言っても過言ではない問題が目立った。問2は物語文であった。水墨画教室の講師の視点を読み解く問題で、心情を答えるなど基本問題で構成され、高得点が望めるものであった。問3は説明文であった。問2の物語文が易しかった分、難しかったと言える。抽象的な「自己デザイン」というテーマで、読みにくいと感じた受験生は少なくないだろう。(ク)の問題のように本文を通して筆者の考えを捉える問題では、解答選択肢も選びにくく充分吟味する必要があった。問4は古文であった。内容把握はし易かったのではと感じる問題だ。2つの出来事とそれに対する登場人物の考えを読み取れば正答にたどり着けたはずである。問5では。昨年同様の資料問題で、2つの文章から情報を読み取る問題であった。(イ)の記述問題は、「短期間」・「特別」という語句の条件と、記述の結びとなる「…という特徴があると言える」という言葉をヒントに書き出せば、容易に解答できたと言える。普段の勉強で、書いてまとめる、といった学習に触れていれば、平均点は軽く超えられると言えるだろう。
- 理 科 -
設問数や配点の変更があったものの、出題構成はおおよそ、変化はなかったと言える。物理分野では、凸レンズではなかったものの光の屈折考える問題で、作図においても奇をてらうようなものではなかった。また小球の運動問題では、実験結果から傾きの大きさと速さの変化の関係を読み取ることができたかがポイントとなった。化学分野では、日常生活に密接である発砲入浴剤を題材にした問題が出題された。この入浴剤とクエン酸と炭酸水素ナトリウムの反応について、基礎知識やグラフを読み取るだけではなく、質量割合の計算力も問われた。生物分野では、微生物の働きが問われた。ヨウ素液やベネジクト液の反応の強さが扱われることは多くはないが、原理を理解することで正答を導くことができる。地学分野ではプレートの動きや地震計、震央からの距離や緊急地震速報など、地震に関する知識を幅広く習得しておく必要があった問題と言える。
入浴剤や地震の問題を筆頭に、日常生活でおこる現象にどれだけ興味があるか、そして敏感であるか否かが、得点を左右したのではないかと思われる。
- 社 会 -
出題傾向・構成は昨年と同様、設問数も34問と同じであった。地理分野では、地形図の問題はなかったものの、雨温図と都市の組み合わせ問題や時差の問題が例年通り出題された。ただ時差の問題は、日本の標準時子午線が東経135度であること、1時間の時差は15度であることが分かっていないと解くことができず、基本知識の定着力が求められた。歴史分野では、史料や説明文などから、時代背景と出来事を瞬時に引き出すことができるかが問われた。特に近現代史では、出来事の順序を前後の関係と合わせて正確に理解しておくことが求められた。公民分野では、全体的に何度は高くはなかった。そのような中、時事問題と融合した問題が目についた。昨年に発行された新紙幣や一昨年に行われた広島サミットなどが問題に織り込まれた。また政治や経済についての基礎的な知識が求められた。前述したように難度は高くはなかったが、選択肢の正誤の組み合わせが出題されるなど、速さと正確さが求められた。最後の問7は総合問題ではあるが、地理分野を中心としたものであった。地図、表、資料の一つずつをよく考察していけば正解へたどり着けたと思われる。
普段の学習において、複数の情報を組み合わせた学習、多面的に事象を捉える勉強、そして演習問題の多くに触れることで対策を取ってもらいたい。