大学推薦入試テスト式に批判の声
9月以降に各大学で入学試験が行われ、その大半が年内に合否が決まる総合型選抜テスト、旧AO入試が今問題になっている。この総合型選抜テストでは、学力以外の要素を面接や書類審査、小論文で合否を左右するのが一般的であるとしている。この総合型選抜テストのメリットは、学校の成績や校内・校外活動の記録などが記載された高校の学校推薦書が不要なので根強い人気がある。そしてこれを利用する生徒が、大学進学者の半数以上の59%にも上る事実がある。
さて、昨今この総合型選抜テストが何故批判にさらされているのか。それは今年8月下旬、東洋大学が入試説明会において「本校においての総合型選抜テストでは、面接や小論文は一切行わず、学力のみで決まります」と発したことにある。東洋大学は全学部で新しい総合型選抜テストを実施するとしており、名称も他校と差別化するために『学校推薦入試基礎力テスト型』とした。試験は英語を必須とし、もう一科目は数学か国語のどちらかを選択する。大学側は学力のある生徒を求めており、年明けの一般入試を目指して勉強する高校生をターゲットとした狙いがある。合格発表は年内の12月中旬としている中注目するべき一つに、入学手続の最終期限を2月28日としていることだ。つまり首都圏の難度が高い有名私立大学の合否状況を見て、進学の是非を考えることができる。募集人数枠は全学部合計で600人ではあるが、おそらく定員の4倍から5倍の合格者数が予想される。
関西圏では近畿大学をはじめ一部の大学ではすでに実施されており、いよいよ首都圏でも、という疑問の声があちらこちらで耳にする。つまり偏差値偏重の受験競争に逆戻りをしている感がぬぐえない。そもそも総合型選抜テストの前身の旧AO式入試は、このような競争の批判を受け、1990年代以降に総合的、多面的に生徒の大学合否を図ることが重視され、文部科学省もこれを後押しした。小論文・面接、そして自己アピール書を下に判断されるAO入試は瞬く間に多くの大学で導入された。しかしこれらが合否の基準から外されるといったい新しい総合型選抜テストとは、一般入試と何が違うのか、と意見が広がっている。都内のある高校の教頭は、「事実上一般入試の前倒しで、ルール違反ではないか。このように大学進学決定の早期化が進めば、高校3年生の教育が空洞化しかねない」と話す。現在中高一貫校の私立学校では、6年間のカリキュラムを5年間で終了し、高校3年生で志望校の過去問を中心として取り組むカリキュラムがほとんどである。が、この状況を睨んで5年間から4年間といった前倒しが加速していく流れが予想される。大東文化大学は、東洋大学のこの発表を受けて、来年度から同様の学力重視の総合型選抜テストの導入を検討していたが、急遽今年からの導入を決定した。このように高校と大学の利害が一致すれば、この流れはますます加速していくであろう。本来、受験生の学ぶ姿勢や個性を重視するのが本来の趣旨であるが、広がり次第では何らかの規制を設けなければならなくなるだろう。