教員増へ門戸拡大
以前、ホームページの「室長のつぶやき」にも記載した教員不足問題。これについてはなかなか解決ができず、深刻化する一方である。そのような中、各自治体で行われる教員採用試験において志願者の奪い合いが加速している。これを打開する、2つの策が打ち出された。
まずは、教員になるための免許状とはどのようなものかを確認しておきたい。免許は大きく2つに分かれる。多くは大学における教職員課程を修了し、そこで得ることができる「普通免許」である。もう一つは優れた経験を持つ人に対して交付される「特別免許」だ。前述した普通免許は、専門性の高い順から「専修」、「1種」、「2種」とさらに3つに分けられる。ちなみに高校では2種免許取得で教壇に立つことができない。各自治体において若干の日程や試験内容の差はあるものの、概ね一次試験では教職教養や一般教養、また専門教科などの筆記試験が行われ、合格者のみ2次試験で論文や面接といった試験が課される。
さてこのような中、前述した志願者の奪い合いを緩和するために山口県の教育委員会では「特別選考枠」というものを設け、採用試験が7月9日に行われた。採用予定枠の5人に対して57人の応募があり、倍率は11.4倍にもなった。公立小学校の昨年の平均倍率が2.5倍なので、その4.5倍ほどの競争率である。この特別採用枠では、合格した後に2年間通信制の大学で教員免許を取得し2026年に着任するという流れになっている。県教育委員会では、門戸を広げ人材を求めたいとしている。このような策は、埼玉県や福岡県でも導入している。またさいたま市や大阪市では、大学での研究歴や研究機関や企業に勤務した経験を持つ人向けの採用枠を新設している。合格者は教員免許を得る必要はなく、府や県からの特別免許出教壇に立つことができる。
もう一つは、教員採用試験の前倒しである。教員採用試験は、先に述べた1・2次試験が7月から8月にかけて行われる。この合格発表が9月から10月にされる。一般企業の内定よりかなり遅いことから教員志願者が流失していることが指摘されている。文部科学省は24年度実施の採用試験から日程を前倒しする改革案を出しているが、自治体の一部、東京都や千葉県、千葉市や富山県では1次試験を大学3年生での受験も可能にした。さらに横浜市と川崎市は、大学3年生の特別枠を用意した。学校推薦を受け3年生には、1次試験が免除され、2次試験のみを課すというものである。
このように教員不足を補う策が行われているが、その一方で教員の質が大きく問われるように思える。教員への適性は時間をかけて見極めるべきであり、学校着任後のミスマッチを防げるかという課題がある。現場理解が不十分だと学校の様々な問題に直面した時、対応できない恐れがあるのではと懸念してしまうのは私だけだろうか。