
小学校教員不足深刻化
全国的に小学校教員の不足は深刻だ。文科省によると、小学校教員試験の採用倍率は平成12年度の12.5倍から下落傾向が続き、令和6年度は2.2倍で過去最低を記録した。背景には、定年による大量退職に加え、産休・育休取得者や特別支援学級の増加で採用枠の拡大がある。労働時間が長く激務というイメージもつきまとい、近年採用を拡大している民間企業との競合も厳しさを増していると判断できる。
文部科学省は教員確保に向け、今年度は「標準日」を5月11日に前倒した。各教育委員会に対し、免許を保有しているものの長く教員として働いていない、いわゆる「ペーパーティーチャー」の現場復帰や多様な経験を持つ社会人経験者の採用を促すなど取り組みを進める。
さまざまな業種で人手不足が深刻化する中、各自治体が教員確保に苦心している。特に幅広い教科を教える必要のある小学校教諭が深刻で、高知県では令和7年度採用(6年度実施)の1次試験を他の地域より約1か月早く実施したものの、合格者の約7割が辞退した。12月に実施した2次募集で何とか例年並みの人数を確保できたが、全国的にも6年度の採用倍率は2.2倍と過去最低を記録している。文部科学省は今年度から試験日の基準を民間並みの5月11日に前倒しするよう各教育委員会に要請し、一部では試験を1年前倒して大学3年生に内定を出す制度を創設するなど試行錯誤が続いている事実がある。
高知県教育委員会によると、令和7年度の採用試験を経た採用者の内訳は小学校教諭127人、中学教諭42人、高校教諭44人になっている。いずれもほぼ採用予定人数に達しており、競争倍率は全体で約4.8倍と例年並みとなった。
県教育委員会が昨年6月に実施した1次試験で、小学校教員(募集人員130人程度)に578人が応募し、2次の面接試験を経て前年より80人多い280人が合格した。しかし、10月末までに204人が辞退した。そのため県教育委員会は13人を追加で合格とし、11月時点の採用内定者は89人に。その後、12月に2回目の試験を実施して何とか人員を確保した。
文部科学省の担当者は、「定年退職や民間企業との競合は構造的な問題で、教員不足を一朝一夕で解決するのは難しい。各現場で教員の魅力を発信するなど試行錯誤するしかない」と話している。